ご挨拶

海洋堂フィギュアミュージアム黒壁 龍遊館の10 周年に寄せて

時の経つのは早いものである。龍遊館を設けてから、はや10 周年になるという。
当時はフィギュアを、日本の新しい文化として創り上げたという気概があった。87歳になった私にも、まだ70歳代の闘志と、やる気があったのであろう。
むかしアメリカのニューヨーク自然史博物館で観た、1/1の巨大ジオラマにはど肝を抜かれた。 1/1の象やキリン、そしてライオンや、サイ(すべて剥製) などが群れている巨大ジオラマを 想像できるだろうか?
その巨大ジオラマを観るために、博物館へ何度も通ったのである。そしてこの巨大ジオラマを 縮小したら…と考えたのが、龍遊館のジオラマである。

フィギュアを箱に収めることで、ひとつの物語が生まれる。館内の展示のすべては、ジオラマで演出するという、日本で初めてのミュージアムづくりを果たしたと言えるだろう。
それから10年、岡本さんと安藤さん、ミュージアムスタッフでジオラマの世界観を追求して、今では全国からの展示依頼も殺到するようになっている。
ジオラマの世界は、画期的な発想に基づいている。かつて歌川広重の「東海道五十三次」をジオラマにした時は、広重の絵を立体の風景として制作したのである。
葛飾北斎の版画なども、ジオラマにすれば絵と異なる迫真力が生まれるだろう。そのように考えれば、ジオラマづくりも無限の可能性を秘めているのである。
スタッフもようやく一流のジオラマづくりが可能になった。物語性のある魔法の箱は、やり方次第では、可能性は無限であろう。

10周年を迎えて、尽きせぬ魅力があるものなど、そうそうは見当たらないだろう。ジオラマに付加価値を加えることで、視るものを限りなきイメージの世界へと誘えるのである。
海洋堂のフィギュアづくりが無限であるように、ジオラマづくりはより壮大なドラマすら演出できるだろう。
エヴァンゲリオンの世界づくりで、新しい可能性を見出している。そのように次々に新しい条件を探れば、市場は果てしなく広がるのである。
ジオラマづくりが、多くの人々のイメージというか、夢を膨らませる仕掛けとなれば、より高度な箱づくり、ジオラマづくりとして進化する筈である。

10 周年の手応えはあった。これからは、もっと楽しいイメージの世界に遊んで欲しい。
スタッフのひたすらな努力と精進を、この10 周年の機会に称えたい。



海洋堂フィギュアミュージアム館長